今週はE3等のイベントも控えており,KOF14関連の新しい記事も一段落しているので,インタビュー記事を載せていこうと思います.

最初は,オロチナギ.com記事part1でもコメントを残していた,欧州KOFプレイヤーの雄,TSS Atma氏です.

彼はプレイヤーとして活躍するだけでなく,後述されるようにシステム解説の動画も多数制作しており,KOF14でもシステムを深く掘り下げるであろうことが期待されています.

そんなAtma氏によるKOF14に関するインタビューをお楽しみ下さい!

(元記事:『King of Fighters Player Spotlight: TSS Atma』

http://www.readersgambit.com/king-fighters-player-spotlight-tss-atma/

(※6/14 一部加筆)

※ 多分に意訳を含みますので厳密には正確ではない部分があるかもしれません.その点はご了承下さい.また,間違い等ありましたら,ご指摘いただければ幸いです.

※ 文中の「*」は訳註になります.各段落下に記していますのでご参照下さい.

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最後にKOFの新作*1がリリースされてから数年,正確には6年ほど経った.SNK格闘ゲームの主要なシリーズは会社の方針変更によりほぼ終わりを迎えていて多くのファンは彼らの愛したキャラたちが次に姿を表すのはパチンコ機ではないかと恐れていた.幸運なことにそうはならずSNKは新たな方向性でシリーズを復活させた.3Dモデルに注力し,PS4独占タイトルとなって,EUではDeep Silverが販売元となった.

(*1:KOF13シリーズのことを指していると思われる)

以前のKOFは日本のアーケードで何ヶ月も前にリリースされ,最終的に数ヶ月のちに西欧のマーケットに投入されてきた.しかし,KOF14については少し異なる.ストリートファイター5のように,発売日が各国とも8月に集中しており,EU版はDeep Silverより8月26日にリリースされることとなった.別の異なるアプローチとして,招待イベントが開かれた.世界各国から多くのプレイヤーが招待され,直近のものはフランスのレンヌで開かれたスタンフェストで行われた.これらのイベントはヨーロッパ全土の多くのプレイヤーにフランス最大の格ゲーイベントへの参加を実現し,リリース前にKOF14を体験することができた.我々は幸運にもDylan “TSS Atma” Bryson氏にKOF14に関して訊く機会を設けることができた.

Dylan(Atma)氏の業績について知らない人に解説すると,Dylan氏はKOFでEVOのベスト32に入ったことがあり,Hyperspottingでは常に最上位層に入賞し,KOFのためにアメリカ,モロッコ,フランス,そしてイギリスの各地に遠征に出かけるほどである.そしてもっとも重要なのは,スタンフェストのKOF14招待大会で3位に入賞していることだ*23位はヨーロッパのプレイヤーの中では最上位で,なおかつレジェンドであるシャオハイにしか負けていない.Dylanは常にローカルなKOFシーンに積極的に参加し,常にKOFについて「うならせて」きた*3.プレイで周囲をうならせ,また炎庵の永久を完走するときに絶え間なくアケコンをうならせるのだ.イギリスのKOF界において彼は,はっきりとしない伝聞も含めて,間違いなく権威である.

(*2:優勝はシャオハイ,準優勝はフリオニール.ダブルイリミネーション式なのでおそらく,ウィナーズ,ルーザーズともにシャオハイ氏に負けたものと思われる.使用キャラは,アテナ・キム・庵.

*3:原文は ”making noise”で,「評判になる」と「(庵の永久で)騒音を立てる」のダブルミーニングになっている.)

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Q. まず最初に,招待大会での目覚ましい活躍,おめでとうございます!シャオハイのようなプレイヤーと相対して,さらにあと一歩のところまで追い詰めたことについて,どう感じましたか?

A. ありがとう!正直に言えば,そんな大げさなことではなかったよ.何年か前にEVOで野試合をシャオハイ相手にやっているし,遠征時にも多くの有名KOFプレイヤーと対戦して来たので特別なことには思わなかったね.その上,僕とシャオハイはスタンフェストの間に少し対戦していたし,一緒にキムのコンボを探したりしていたからね.それより本当にナーバスになったのは対戦が行われたメインステージの方だ.あんなに大きなステージに上ったのは初めてだったし,失敗したくない,と思ってしまった.ある見方からすれば僕はより良くプレイしていたかもしれない.プレッシャーに直面して崩れてしまいそうだったけど,それでも大会前の野試合から自信を得ていた.

Q. KOFはほぼ20年以上続いており,その間たくさんのシステムが施されてきたわけですが,KOF14に過去作に通じるところを感じましたか?そしてそれはどの作品になりますか?

A. プレイの感覚は間違いなくKOF13に似通っているね.どういうプレイになるか,という点については過去作とはっきり似ていると言えないけれども,より危険になったKOF2000と言えるかもしれない.どのクリーンヒットからもまとまって大きなダメージを持っていかれるから,地上戦が信じられないほど恐ろしい物になっている.

僕の考えでは,KOF14はハイレベルなKOFのプレイのあり方が強制されるゲームだ.なぜなら,このゲームにおける『初心者狩り』要素が非常に押さえられているからだ.このことはある点で逆に僕を困らせることもあった.例えば,ジャンプでキャラをめくるのに時間がかかるので,めくりで飛び越えられたと思ったら,まだ相手が表にいたということもあった.そのせいで庵のJB*4をいっぱい喰らってしまったよ.相手が飛び越してしまう前に立って前方向にレバーを入れたりして喰らってしまってね.

(*4:百合折り狙いがバケて出たJBと思われる.めくる側もジャンプの移動スピードに慣れていなかったようである)

Q. KOF14の早期開発時点でのグラフィックについて,たくさんの懸念が巻き上がったわけですが,その時と比べたら明らかに進歩しています.グラフィックについてどう思いますか?そして今日のゲームの水準にかないますか?

A. グラフィックは多くの人にやっかいな問題で,僕の意見は信じられないほどいろんな評価が混ざっている.まず,肌の質感については非常にお粗末で,これが何人かのキャラクターをひどく見せている.しかし,画面効果や衣服については多少の例外を除けば,全部とてもよく見える.グラフィックは僕にとっては受け入れられるものだったけど他の人もそうであるとは言えないだろう.

Q. ステージ背景に観衆がいないことも大きな違いだと指摘されています.ファンはさみしがることだと思いますか?

A. これも認識していたし,そうなった理由もいくつか思いつくことはできる.僕は観衆やステージ内のお遊び要素が好きだった.例えば江坂ステージで窓のところに3面看板を持っている野郎*5がいたり,カメオ出演しているキャラがいたり,ラウンドが進んでステージが変化したりするところとかね.それらがなくなるのは寂しいけど,3Dへの転換によるものだろうし,今となっては受け入れられるよ.

(*5:ネスツスタイル京の江坂ステージにいる真吾のこと?)

Q. (24キャラ版での)キャラ選びを見ていると,プロプレイヤーはトーナメントでは旧キャラに舞い戻って使う場面が多く見られました.これらの旧キャラは他のキャラよりも強いと思われますか?

A. 3日しかKOF14に触る時間がなかったわけだから,旧キャラを使うのは自然なことだろう.僕はそれらの旧キャラが飛び抜けて強いとは思わないけれども,多くのプレイヤーは旧キャラに関して長年の経験を得ているし,特にKOF13のプレイヤーはそうだろう.このようなとても短いスパンでは旧キャラが強く見えてしまうだろう.

Q. トーナメント以外で他の新しいキャラを使いましたか?使い心地はどうでしたか?

A. 新しいキャラは少なくとも1~2回は触るようにしたよ.KOF13にいないキャラについて僕が情報を集めた限りで分類してみよう.

チャン:弱いだろう.動きが遅いし,コンボをどうすればいいのか本当にわからなかったし,飛び道具持ち相手の立ち回りがとてもお粗末だ.チャンを使って2マッチほど対戦したけど,予想通りの負け方だったよ.

チョイ:チョイはKOFの歴史の中で僕が一番憎いキャラだ.今回もその印象はすぐには変わるとは思えない.プレイしてみるとまあまあ良かったし,僕のチョイに関する限られた知識で判断すると,チョイは強いキャラになる可能性があるけど時が経てばわかる.これまでのところぶっ壊れすぎているようにも見えないし,2002無印のチョイではないね.

シルヴィ:シルヴィは厄介な上に強いタイプだと思う.もし正しくプレイできたならシルヴィはとても効果的な強さを発揮するだろう.僕は中堅において2ゲージで45%ほど減らせるガチなコンボを見つけ出したし,それはとてもよかった.シルヴィは新キャラの中でも強い方のキャラのうちのひとりに違いない.

ネルソン:彼は短期間で習得できないような複雑さをしていたけれど,強そうに見える.ネルソンはラッシュを基本に作られていて,それが02無印で僕がプレイしていたヴァネッサと同じように見える.先入観かもしれないけどね.ネルソンはとても弱いキャラとなるか,とても強いキャラとなるか,どちらの方向にも可能性があると思う.8月になってゲームが出たら,絶対にそれなりの時間をネルソンにかけるつもりだよ.

バンデラス:スタンフェストの間,触っている人をあまり見なかったし,僕自信も1度か2度しかプレイしなかったね.バンデラスはノーゲージコンボの幅がないし,確固たる対空や切り返しのひとつもない.しかしながら彼は素晴らしい立Bとコマンド投げを持っている.僕が思うに,バンデラスは今のデザインだと,全ての弱攻撃から発動していく必要がある.それは試合を通して活躍するためには,たくさんのゲージが必要であることを示し,あまり好ましくないからだ.バンデラスには発展の余地はあるけれど,スタンフェストの3日間では充分ではなかったようだ.

ルオン:ルオンはとても強く,この3日間では新キャラの中でも間違いなく最も強かった*6.彼女の伸びるキックを絡めた動きは信じられないほど距離を保つのに効果的で,対処するのは難しい.既にしっかりしたコンボをいくつか見つけているにも関わらず,改善の余地がある.発売されたらもっと試してみるつもりだが,ルオンは絶対に新たな強キャラとなるだろう.

(*6:優勝したシャオハイも,準優勝のフリオニールも使っていた)

キング・オブ・ダイナソー:ダイナソーは完全に終わってる.僕はダイナソーのことを全く理解できなかったし,改善の余地もないだろう.全てにおいて動きが遅すぎる.私には理解できなかった.後のバージョンでは改善されるのかもしれない.

タン・フー・ルー:タンは強いと思う.最後の方にほんの少し触っただけだったが,彼はしっかりしていて対処するのは難しかった.タンはとても頼りになるキャラで,新たな強キャラ候補であるという他ない.

Q. 残りのキャラクターのうち,あなたの目を引いたものは誰ですか?試してみて,現在のチームに加えてみますか?

A. 24キャラ版で使えないキャラでは,アリス,アンヘル,ラモン,シュンエイ,ラブハート,ギース,ガンイルに興味がある.24キャラ版ではアテナは本当に強いし,発売後も使うつもりだ.SNKがビビってアテナを弱体化しないことを願うね.彼女は弱体化が必要なほど強すぎるわけではないと思うし.

Q. KOF14が出てから遠征する計画はありますか?

A. 100%行くよ.できうる限り遠征するつもりだ.まだ確固たることは言えないけど,ロンドンで開かれるRevolution 2016とNEC17には参加する予定だよ.

Q. KOF14をプレイしていた時間は楽しめましたか?また,それにもとづいて競技シーンに堪えうると思いますか?

A. 僕はスタンフェストでKOF13をプレイした時間よりも多くの時間,KOF14を楽しんだよ.競技的には堪えうるだろうけど,同時に少し壊れているところもあると思う.しかし,KOFとしていい道筋をたどっている.14は新鮮で面白いから,僕は競技シーンがどう14を発展させるか楽しみにしているよ.

Q. あなたはKOF13でシステム的に面白い(かつ壊れた)仕込み等を見つけたこと*7で知られていますが,同様のテクニックは14でも見つかりましたか?

A. KOF13でもできたテクニックは14でも可能だったよ.13で公表した中でも壊れたテクニックは多くないけどね.もし,君がKOF13での空キャン仕込み*8が使えるなら,KOF14でも同様に使えるかもしれないが,多くの通常技が空キャンできなくなっているので,空キャン仕込みのテクニックは大幅に弱体化しているよ.発売後には14のシステムを悪用する方法を探すつもりだけど,そんなに見つけきれていないんだ.唯一見つけたのはアテナの画面端で立CD>発動とやったときに,屈Cを押した時に地上ヒットになるわずかな猶予があって,地上でフルコンボが決められるんだ.それが意図的なのかはわからないけど,関係なく難しいしとても強力だ.

(*7:TSS Atma氏のyoutubeチャンネルには,KOF13に関するシステムを利用したテクニックを解説する動画が(既知のものも含め)大量にアップされている.余裕があれば目を通すことをおすすめする.

https://www.youtube.com/user/AtmaDP/videos?shelf_id=0&view=0&sort=dd

*8:正確には通常技空ぶりキャンセルとヒットストップを利用した仕込みテクニック.ときど氏のMrカラテによる虎砲仕込み足払いなどが動画的には有名)

(後略)


Atma氏はシステムへの理解への造形が深く,またプレイヤーとしても精力的に活動しているので,KOF14でもその活躍が見られるかもしれません.

欧州のKOFプレイヤーは,アジアや北米・南米系と比べると日本における知名度が低いのは事実です.

しかし,後日インタビュー記事が掲載予定であるKOF14の欧州パブリッシャー担当であるDeep Silver社は精力的に取り組む姿勢を見せており,欧州KOFプレイヤーも今後キーになってくるかもしれません.「予習」の意味もこめて,欧州プレイヤーのインタビュー記事を掲載して参ります.