【動画翻訳】対戦格闘ゲームでコーチングは禁止されるべきか?

家庭用ゲーム機で行う格闘ゲームが大会の主流となりつつある現在、特に海外大会の配信などでは、プレイヤーの横で「コーチング」(助言をすること等)を行っている姿をしばしば目にすることがあります。

それらコーチングに関して、Core-A Gamingの動画で議論がなされています。

7分程度の動画ですが、Julio選手の電話コーチングなど象徴的なシーンも映るため、日本語訳と併せて是非一度観てみて下さい。

元記事:Analysis: Should Coaching Be Banned in the FGC?(https://www.youtube.com/watch?v=G_x-SWVeCEQ)

シンガポールはSEAM(South East Asia Major)というトーナメントの本拠地であるが、世界的にも最高峰の競技レベルの戦いが見られることで知られている。そして、アジア各国の無名の強豪プレイヤーが強さを証明するために、地の利を活かしてSEAMの舞台に来襲する。その結果、異なる地域からなる同国人のグループが互いにコーチングし合っている姿を目にするだろう。

(※Infiltration選手らがチームメイトに助言している姿が映る)

実況「これではコーチというより、ただの取り巻き連中だ」

こういったコーチングは多くの場合害はないが、コーチングに関するルールが完全に洗い出されたことはないので、時々みんなが繰り返し話題にするようなことが起きる。

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▲ストVのトーナメントのグランドファイナルの試合間(キャラ選択画面)でJulio選手が友人から携帯電話を受け取り、アドバイスを受ける。対戦相手のPR Barlog選手は「早くしろ」「時間をチェックしろ」などとジェスチャー

解説A「電話を受けているのか?ライフライン!ライフラインだ!*1」

解説B「Chris T選手と電話してるのかい?」

解説A「(相手は)Chris T選手だろう」

(*1:クイズ番組、”The Millionaire”で用意されていた、あらかじめ用意した特定の人物に電話をかけて相談することが出来る救済措置のこと。日本でも『クイズ・ミリオネア』として同様の企画の番組が放映された。)
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▲Julio選手がEcho Foxと契約を結んだ記事でも「グランドファイナルのセット間にケータイで電話をして、聴衆を驚かせた」と書かれているのが映る。

コーチングを認めるのか、あるいは認めないのかはっきりと決めるのは難しい。何故なら、対戦格闘ゲームは本来的に「マインド・スポーツ」と「フィジカル・スポーツ*2」のちょうど中間に位置するからだ。チェスのような「マインド・スポーツ」においては、コーチングのようにゲーム内の助言をする行為は「不正行為(チーティング)」として扱われる。しかし、「フィジカル・スポーツ」においてはコーティングは許されているどころか、一種の文化のようなものだ。

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▲判定に不服を示して、バスケットコートに椅子を投げ込むコーチ

これらのコーチの多くは選手よりも有名になるし、あるコーチなどはスーパーボウル*3で放映された野球をED(勃起障害)に例えたCMに出演したりする。

コーチ「アメフトは男らしい。(一方、)野球はレヴィトラ*4を使うべき有様だ」

(*2:一般的に「スポーツ」といえばこちらを指す。実際に身体を動かして運動する競技のことを示す。
*3:スーパーボウルとは、アメリカンフットボールの全米リーグであるNFLで、全米王者を決める決勝戦のことを指す。
*4:レヴィトラ(レビトラ)は男性の勃起障害・勃起不全を改善する薬のひとつ。件のCMはレヴィトラのCMで、「アメフトは雨の中でもプレイするし、ぶつかりあって男らしい(男性を刺激する)」「野球は雨が降ればプレイしないし、ひ弱い」という対比で、レヴィトラによって得られる男性機能の回復をアメフトの荒々しさになぞらえたもの。2003年当時は同じく勃起改善機能のあるバイアグラ、シアリスと共にシェア争いをしており、シカゴ・ベアーズの元ヘッドコーチ、名将マイク・ディトカをEDと戦うパワフルな象徴として広告塔に選んでいた。(詳細 リンク先英語)。)

LoLのような一部のe-sports競技ではコーチの役割を確立させている。一方で、格闘ゲームのトーナメントではコーチングの基準は多岐に渡る。しかし、舞台上におけるコーチングを認めるか否か議論するアイデアを得るために、コーチングのもたらす4つの効能について考えなければならない。

①知識

一つ目はゲームに関する「知識」だ。これはフレームデータや、テクニック(仕込み)、キャラクター特性などに関するものだ。

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例えば、私の友人が1-0のスコアで、バーディー相手にフルゲージの3ラウンド目を迎えていた。

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▲バーディー側のプレイヤーはEXブルホーンからVトリガー発動。固まったケンに大Kを振って2セット目をもぎ取る。

このことで彼は2試合目を逃してスコアは1-1になった。私は彼に「EXブルホーンからVトリガーを発動した時、バーディーは-9フレームの不利だ(*確定で反撃ができる)」と彼に耳打ちした。そして3セット目の3ラウンド目、最後のラウンドで、対戦相手は先程と同じEXホーン→Vトリガー発動という動きを、友人が反撃を知らないままだと判断して行ってきた。しかし、結果はこうなった。

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▲2度目のEXブルホーンからVトリガーを発動に対して、ケンはCAを叩き込んで勝利

友人は私が文字通り、一言伝えただけで勝ってしまった。そして競技的な格闘ゲーマーであるためには、宿題(調べ物)をいかにやってくるかという面もあるが、私は彼に試験の真っ最中に答えを教えたようなものだった。

(※シンプソンズで試験の様子が映る。

「リサ、7番の答えなに?」

「ごめんなさい。テストの目的は生徒の評価なんだから教えられないわ」)

②戦略

2つ目のコーチングの恩恵は「戦略」である。

追加でもう2つ試合を見る目を増やすことが出来れば、コーチはプレイヤーが勝負の熱で見落としている所を見つけることが出来る。

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▲ときど選手(リュウ)対ジャスティン選手(かりん)のセット間に、ときど選手にかりん使いのマゴ選手が耳打ちする

解説「マゴ選手はもちろんかりん使いだから、『かりん戦について教えるよ』と言う具合でいるんだろう。」

このような助言は試合中に行えば易々と不正行為の領域に達する。たとえ最高峰のレベルのプレイをしていても、プロプレイヤーでさえ相手のリベンジゲージが満タンであることを見落として、撃ってはいけない飛び道具を撃ってしまう。

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▲Marn選手のダッドリーの飛び道具無敵のあるウルトラコンボを喰らって負けるウメハラ選手

しかし、もしコーチがゲージが溜まったことを知らせてくれる役割を果たしているなら、飛び道具を撃つことをやめさせ、試合結果は変わってくるだろう。

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▲EVO2013、KOF13部門グランドファイナルでRaynald選手(左)が客席の友人よりアドバイスを受ける。

マッチの間であっても、コーチはあなたや対戦相手の悪い行動を指摘して、それを戦略として昇華させる。3試合中2試合までの短い時間で対戦相手のクセを見抜くのは非常に難しいが、2人で取り組めばわかるまでの時間はとても短くなる。

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▲ジャスティン選手がときど選手戦のインタビューを受けて

ジャスティン選手「前回はときど選手がとても運が良かった(観客から歓声が上がる)。そして今回は彼を守ってくれるマゴ選手が隣にいなかったのが勝因だ(会場ヒートアップ。インタビュアーもアップ)」

③心理戦

3つ目のアドバンテージは「心理戦」である。

コーネル大学の研究によると、「携帯電話ごしの会話が聞こえていると、人は日常動作に伴う認識的なタスクにおいて注意散漫になる」ことがわかった。一方の会話内容のみ聞こえる、あるいは携帯電話の話をチラリと耳にすることで、情報ギャップが生じ、会話を完全に聞き取れているときには起きない動揺が生まれてしまう。これは「情報ギャップ」を埋めようとする自然な働きで、ジョージ・ローエンシュタイン氏*5によれば「潜在的に有用、あるいは興味深い情報の欠落への気付き」である。人々があなたについてヒソヒソ話をしていると、注意が散漫になり、その会話に引き込まれてしまう。

(*5:George Loewenstein。カーネギーメロン大学所属。経済学と心理学を修め、行動経済学、神経経済学の第一人者のひとりである。)

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④激励

コーチングのもたらす最後の効果は「激励」である。

これは唯一実体のあるプレイヤーへの助けであるが、ボクシングのシーンにおいては選手に何をするべきか伝えるだけ以上の効果がある。

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▲ボクシング6階級制覇のマニー・パッキャオとそのヘッドコーチ、フレディ・ローチ

効果的な激励の特徴として、あなたが専門性を認め、なおかつ信頼できる人間であることが挙げられる。

ある、特筆すべきケースとしては、プレイヤーのHungrybox選手である。彼はEVOで2回連続2位となり、2位になる呪いがかかってるとして有名になったほどである。

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▲EVO2015、Hungrybox選手に敗退したスマブラDXの超強豪プレイヤー、Leffen選手とMang0選手。配信席にて。

Mang0 「Hungrybox、我々をEVOから解放してくれてありがとう。お礼を言うよ」

Leffen 「君だっていつか僕をEVOから解放してくれるかもしれない」

Mang0 「Hungryboxが今後一生EVOで2位を取り続けるというのなら、EVOで敗退させられたのも溜飲が下がるだろ」)

しかし、Dream Hack 2015においてLuis “Captain Crunch” Rusiasというコーチの助けにより、Hungrybox選手はArmada選手*6をグランドファイナルズで破って優勝した。

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▲Luisコーチ(左)に助言を受けるHungrybox選手(中)。右は因縁のArmada選手。

解説A「さあ、ここが彼らがたどり着きたかった場所だぞ」

解説B「ああ、Hungrybox選手の隣に座っている人物はスポーツ心理学の人間だと聞いている」

解説A「おおー」

解説B「とてもクールだ」

前例のないこととして、Hungrybox選手のスポンサーであるチームLiquidは、LuisをコーチとしてEVO2016直前に契約した。そしてHungrybox選手はEVO2016で呪いを打ち破り、優勝することができた。

(*6:EVO2015決勝においてHungrybox選手はArmada選手に敗れて優勝を逃していた。ちなみにEVO2016決勝も同カード。)
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▲インタビューを受けながら、向こうにいるLuis “Liquid Crunch” Rusiasの方を見るHungrybox選手(左)

インタビュアー「Hungrybox選手、あなたはEVO2013で3位をとり、2年連続で2位になり、とても勝ちたかったと思いますし、プレッシャーもあったことでしょう。どうやってそれを乗り越えてきたのですか?」

Hungrybox「すぐそこにいるあの男(Luis “Liquid Crunch” Rusias)、彼が道程にあるひとつひとつのステップを手助けしてくれたんだ。君たちは彼にもインタビューした方がいいよ。プレイヤーが気が付かないどんな小さなことでも全て助けてくれるコーチがいることは、プレイヤーとして最高のことだ。僕は彼に非常に世話になったよ」

このケースと、よく目にするであろうカジュアルなコーチングとの違いは、彼らはずっと昔から関係を持っているという点である。

(※Hungrybox「僕は中学生の時、Luisのおかげで競技的なプレイに目覚めた」という)

しかし、ここで特記しておきたいことは、Hungrybox選手はプールを抜けた後にはコーチングが禁止されていたにも関わらず、EVOを優勝したことである。これはゲームしている間に側にいなくても、コーチは重要な役割を果たしていることを示している。

これまで私が述べてきたことを鑑みると、私は舞台上でのコーチングのファンであるが、そういったことは抜きにして議論したい。

グランドファイナルにおけるJulio選手へのChris T選手の電話の件を思い出して欲しい。問題は、Julio選手がアドバイスを受けたことではない。なぜなら、Chris T本人が現場にいれば誰も気にしなかったであろうからだ。問題はレギュレーションの欠如である。

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▲電話ではなく、Chris T選手本人(中)がいれば問題なかった?

舞台上でのコーチングには2つの問題がある。

ひとつは時間がかかりすぎることである。トーナメントがいかに頻繁にスケジュールから遅れるのか問題になることを考えればわかるだろう。もうひとつの問題は、指示のためのコーチがいないことである。そのために我々は協議会を設け、電話をかけたりするのだ。最初から指示するコーチがいれば時間制限を設けて混乱を避けることが出来る。そして、Combo Breakerのようなトーナメントでコーチングに関する詳細なルール*7が設けられたことはとても大きな効果がある。いくらか調整すればこれらのルールは人々を満足させるものになると私は考えている。舞台上のコーチングをあからさまに禁止することは、抜本的すぎるし、コミュニティのあり様を考えると想像力に欠ける方法である。

(*7:Combo Breakerにおけるルーリングはこちら
「あなたはセットの間に助言をするコーチを1人置いても良い。コーチは試合中にアドバイスすることは出来ない。セットの間に行うコーチングは1セットにつき1分を超えてはならない。あなたのコーチが対戦相手に対して物理的に干渉したり、乱暴な物言いをしたりした場合、あなたはトーナメントの失格を受ける。このルールはブロック担当の審判によって実行される。」)

同様の議論は女子テニス協会でも起こっている。女子テニスではコート上のコーチングが許されており、さらに議論の多くが同じようなものである。コート上のコーチングは全体のレベルを上げることが出来る。しかし、試合のことを考えると、競技の1対1の様相を取り払ってしまう。今年の女子オーストラリア・オープンではコート上のコーチングを禁止されたが、たくさんの番狂わせが起こり、人々に選手がいかにコーチングに依存しているか印象づけることとなった。言い分に関わらず、そのようなコーチへの依存は個人の達成を祝福する、試合への勝利を軽くしてしまう。加えて、多くのコーチが男性であることも、様々な含意を示している*8。テニスが何世紀も続いているスポーツであるのに未だに標準化されたコーチングのルールがないことを考慮すれば、この問題がいかに客観化が難しいかわかる。

(*8:動画内で示されている記事では、コーチの多くが男性であり、コーチと女性選手との関係が対等でないこともコーチングへの依存度を上げている要因の一つだと指摘している。)

コーチングが許可されるされないに関わらず、標準化されたルールを整備することは将来的にコーチ達がどんな役割を果たせるのか考える事につながり、それに応じたプランを立てることにつながると考える。

(後略)

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