【翻訳記事】バランス調整:ストVとKOF XIVにおける正反対の調整哲学

格闘ゲームにおいて、常に話題に上がるのがバランス調整です。

バランス調整には様々なアプローチがありますが、この記事ではカプコンの『ストリートファイターV』と、SNKの『The King of Fighters XIV』の調整方針、哲学を比較して、その意図を探ろうとしています。

記事後の感想でも触れますが、ここに書かれている内容には元記事の執筆者の断定が多分に盛り込まれており、正確性を欠く部分や強引な議論も見られます。

しかしながら、2つのゲームの対比の構図には面白いところがあったので以下に訳しました。

元記事:Balancing Act: A Look at Street Fighter V and The King of Fighters XIV’s Opposing Balancing Philosophies

どんなゲームの調整でも、ことに格闘ゲームの調整は非常に難しい。多人数戦の中で2人対戦のゲームであっても、しかもお互いに非対称性を持つゲームで、「よくバランスが取れている」ことは充分難しい。しかし格闘ゲームにおいてはそのたくさんの、それぞれ独自の動きとコンセプトを持つキャラ群によって、大きなチャンスがもたらされる。

挑戦的なバランスのゲーム、特に新しいゲームの場合、いかにして開発者がそこに行き着いたのか見るのはとても面白い。今年は特に2つのメジャータイトルの新作が発売された。2月中旬にカプコンが『ストリートファイターV』を、8月にSNKが『KOF XIV』を発売したのだ。他にも今年リリースされた新作があるのにこの2つを選んだのは、バランスにおいてはそれぞれ対照的なものであるからだ。

2つの調整アプローチ

KOF XIVの調整哲学をうかがい知るのは簡単だ。SNKの石澤”Neo_G”英敏はかつて、「キャラクターはできる限り強くして、そこから調整するのが好みだ」という旨の発言を残している。Neo_Gの(彼がカプコンにいたときに制作した)過去作、そこには『マーベルvsカプコン2』、『マーベルvsカプコン3』、『カプコンvsSNK 2』、『ストリートファイターⅢ:3rd Strike』が含まれているが、それらを鑑みると彼の調整哲学がKOF XIVに反映されていても不思議ではない。

一方でストVは、ゲームバランスにおいてカプコンは先述の過去作の調整哲学とは一線を画している。ゲーム内の動作の目的や、昨年のベータテストでそれらがいかに変わったか変遷を見れば、カプコンはSNKの調整とは真逆を目指している。彼らは「強すぎる」キャラを出さないようにしている。リリース前のベータテスト期間で少しでも強い側にある技は調整されてしまった。このことはDLCキャラクターの多くがノーゲージ無敵技や2ブロックVゲージを持っていないことからわかる。

これらの調整哲学はそれぞれの作品の細かなデザインにまで浸透しており、見る人が見れば簡単にわかる。非常に微妙な違いの一つは、キャラクターのパンチやキックなどの通常技のリーチである。KOF XIVでは一般的に、より緩い攻撃判定がつけられており遠くから相手キャラに触ることができる*1。一方でストVではリーチはより短く、特にしゃがみ通常攻撃で顕著である。以下のスライドで違いを見ることができる。

スライドショーには JavaScript が必要です。

▲ラブハートのしゃがみ強パンチは手の先でもヒットしているように見えるが、キャミイのしゃがみ攻撃は足同士が触れ合っているのにヒットしていない

他に特筆すべき違いとしては、ストVではダイブキック(*ジャンプ中に出せる急降下系の攻撃)は前ジャンプからしか出せないが、KOF XIVでは垂直ジャンプやバックジャンプからも出せる*2。

(*1:もちろん、ラルフの遠距離Cのように明らかに触れて見えるのにヒットしない例もある。が、KOFでは全体的に通常攻撃(特に強攻撃)が強くデザインされている。
*2:バックステップから出せるキャラも一部にはいる。)

システム知識vsマッチアップ知識

さて、2つのゲームの開発チームは「バランスの取れたゲーム」という同じゴールを目指しているのに、ではなぜ、異なる調整哲学が存在するのか。答えは該当するゲームのあり方にある。

競争的な格闘ゲームであればどれも、キャラクター同士の差、すなわちあるキャラクターが実際の戦いでどのようにして相手に攻撃を加えるか、がバランスを定義する。特にストリートファイターシリーズにおいてはキャラクター差に重きを置いている。共通システムよりもキャラ特有のシステムにフォーカスしているからだ。ストVも例外ではなく、Vシステムによってキャラそれぞれが特有のサブシステムを持っている(VスキルやVトリガーなど)。そのため、カプコンは極端に不公平なマッチアップを減らすように調整するのだ。

KOF XIVにおいてはマッチアップが軽視されていると言うつもりはない。が、KOFシリーズはユニークなシステムやメカニズムでも有名である。シリーズを定義するかどうかはさておき、小中ジャンプ、前後転などなど、これらのシステムによって他のキャラの強力な武器と渡り合い、キャラ相性を軽減してくれる。これにより、KOF XIVでは中・遠距離戦が強いゲームにも関わらず、シリーズ特有の速くアグレッシブなラッシュを共存させている。

実際に、これらの共通システムをどのように使い、どのように対処するかに重点が置かれている。

パッチと極端なケース

これら2つの会社の調整哲学は将来的なバランスパッチにも適用される。ついでに言えば、双方にとってしばしばあらわれる「極端なケース」、すなわち修正されるべき不公平なキャラクターについても認識はしている。

カプコンはストVのバランスパッチについて、大きな変更はプロツアーのシーズンオフに行うという原則に基づいて計画している。これは調整に伴う大きなシフトによるプレイヤーの負担を軽減し、古くからのアーケードのように、時間をかけてプレイしたい古いファンに配慮しているからである。近年のゲームのようによりアグレッシブに調整をしたりしない。一方でSNKはそのように制約を設けず、キャラクターは強いままにするものの、バランスに関わる「極端なケース」は修正しようとする。

「極端なケース」について言えば、両社の努力にもかかわらず、強すぎる、あるいは弱すぎるといった問題児はいまだに出てくる。登場キャラの大部分が中堅から上位に位置するという、発売時にはまともなバランスであったKOF XIVでもいくつかのキャラはスタートから少々強すぎるようであった。難攻不落の鳥を引き連れたナコルルはその1人であった。一方でK’も安全にかけられるプレッシャーから簡単に火力が出、間違いなくゲームで最強の1人で、トップトーナメントのチームのほぼ常連であった。両者は最近のパッチ(*1.03のこと)によって、他のいくらかの事項と共に調整されてしまった。

一方、ストVでは真逆のことが起きている。ゲームには明らかな上位はいるものの、それらは、春麗でさえも本当の意味で「極端なケース」ではない。代わりに、弱キャラの「極端なケース」を見ると、ファンはトーナメントでも奮戦しているが、競技レベルに達するのは一部のプレイヤーのみだ。その中間において、ザンギエフの情熱的な使い手、例えばRed Bull所属のSnake Eyezでさえ、前作で何年もザンギエフを使ってきたのにもかかわらず他のキャラにキャラ変えしてしまっている。

しかし、弱い「極端なケース」についてはカプコンのやりかたの方が有利ではある。「極端なケース」が認識されやすいのはキャラがとてつもなく強いときであり、それはプレイヤーや観客がそれらのキャラばかり見がちになるからだ。一方で弱いキャラであっても大会等でそれなりの数がいれば、弱すぎるという認識はされづらい。

SNKの場合は、ナコルルやK’、マチュアといった上位キャラが本当に支配的であるかどうか(一ヶ月やそこらで判断できるものではないが)にかかわらず、問題になるのは強さそのものよりも派手さ(*見栄えの悪さ、とも)であるように見える。これらのキャラクターは強ければ傍目を引くが、弱くて問題である場合には認識されづらい。こういった「極端なケース」については、年間計画にとらわれず、すぐに調整を施すことが助けになる。

楽しさと自由度

バランスに関する正反対の方針を踏まえると、次のような疑問が生まれるはずだ。どちらの方針がより良いのか、と。答えははっきりと出せるものではない。そしてそれはプレイヤーがなにを楽しむか、という主観的な部分に依存する。

いずれかの調整方針をどのようなプレイヤーが享受するのか、キーワードとなるのが「自由度」である。どちらのゲームもなにがしかの自由度を強調しようとしている。

ストVはプレイヤーにどのキャラクターであっても選ぶことの出来、大会でも善戦できる、そんな自由度にフォーカスしているように見える。もちろん、奮戦している「極端なケース」(*弱い)に該当するキャラはいるものの、大部分のキャラクターは完全に生き残れる。

さらに重要なことに、上位キャラが、下位キャラをそれだけで圧倒できるような抑圧的な壊れ技を持っていない。過去作のいくつかを見ると、強力な技によっていくつかのキャラは大会で必須のキャラになっている。例えば春麗はおそらくストVで最強のキャラであろうが、多くの大会で優勝していた『ストリートファイターⅢ:3rd Strike』時代の支配力とは比べるまでもない。実際、ストVはトーナメントで勝てる可能性のあるキャラクターは多岐に渡っている。

しかしながら、それだけキャラが多岐に渡っているにも関わらず、ストVが「退屈、つまらない」と評するプレイヤー達がいる。その文脈には以下のようなポイントがある。強い武器を以って相手を叩きのめすことを学ぶのが勝ち負け以前にマッチを面白くする、というものだ。この点はストVの調整においてキャラ選びの自由度のために犠牲になっているところである。

一方でKOF XIVは異なる自由度を提供している。(*共通システムが強いこともあって)プレイヤーに、50キャラの中から強力で支配的な武器や戦略、戦法を、探し、使い、それで相手をいじめることさえ許容している。たとえ中堅とされるミアンであっても、返すのが難しい繰り返されるダイブキックを持っている。1.03パッチ以前の最上位キャラクターはパッチで弱体化したものの、未だに強力な武器を持ち合わせている。ナコルルにはいまだに「鷹につかまる」に無敵がついているし、ラブハートのしゃがみ強パンチはいまだに長い判定を誇っている。

このような自由度へのコストは、既に書いているとおり、「問題児」なキャラクターが上位に居座ってしまうことだ。しかし、格闘ゲームの競技シーンでは支配的な上位キャラが幅を利かせるゲームでもたくさん残ってきた。『マーベルvsカプコン2』や、『ストリートファイターⅢ:3rd Strike』のようなゲームは派手なバランスになっているものの、シンプルにゲームがエキサイティングで楽しいから生き残ってきた。このような自由度によってもたらされたもの、あるいはその自由度そのものがその理由かもしれない。

これらを踏まえると、どの調整方針がいいのか、という質問はできなくなる。プレイヤーひとりひとりが楽しいと思う方を選ばねばならないのだ。

格闘ゲームというジャンルはたくさんの異なるゲームが存在しており、たくさんの異なる開発陣がそれぞれの哲学に基づいてベストなものを作り出そうとしている。ゲームバランスだけでなく、システムや、ビジュアル、キャラデザイン、そういったもの諸々で、だ。このことが現存する格闘ゲームにとても幅広い多様性をもたらしている。

ゲームの多様性、そして格闘ゲームのデザインとバランスの多様性によって今日のジャンルができあがっている。そして多様なスタイルとサブジャンルがあることで、様々な人々がそれぞれの嗜好と好みに応じて楽しみ、競い合うことができる。カプコンとSNKがストVとKOF XIVで行ったことは、まさにこれらの続きだったのだ。


いかがでしたでしょうか。

読まれた方の中にはお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、だいぶ断定や推測、怪しい箇所が多い記事です。カプコン、SNKの過去作による系統立てのあたりも、「それ地続きにして大丈夫なの?」という部分が多く、鵜呑みにできない内容が多い記事ではあります。翻訳の原則上、そのまま訳すようにしていますが、記事執筆者の意見は翻訳者の考えとは必ずしも合致しません。ご注意下さい。

一方で、ストVとKOF XIVという2つのゲームを比べることで、ゲームデザインの相対化をしようという試みがなされているところはとても面白い記事です。「バランス」と認識しているものは何なのか。なにをもって「バランス」が許容されるのか。必ずしも一々定義し直すことはありませんが、そういったところが挙げられているのは考える材料としては面白いです。

特に大切なのは各ゲームでトレードオフになっているところを考え、比較してみることだと思います(本文中で「自由度」と書かれているあたりです)。さらに、そのトレードオフを補完するシステムやコンセプトの存在を考えてみるのも一興でしょう。本文中ではストVを用いて「キャラの多様性を保つ」「強力な技を搭載する」のトレードオフが説明されています(実際には、共通システムによる守りの弱体化および攻めの強化が同時に絶妙なバランスでなされていることも影響していたりするのですが…)。

ただ、あまりにもキャラ同士の「バランス」に関して意識が行き過ぎて、肝心のゲームデザインについて踏み込めていないところがあるのも確かです。「ストVで絵の通りに判定つけてない理由書いていない」とか、「KOF XIVは強力な武器で相手をボコるのが楽しいゲーム、と断言したり」とか、足りていないところはいっぱいあるので注意が必要なことは確かです。1on1と3on3というルールの差異だけでも前提条件は変わってくるはずなのですが…。

ともあれ、整理されている内容や、弱い方の「極端なケース」等については認識を見直すことのできる部分だと思うので、参考までに他のゲームでも考えてみることをお勧めします。

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