最近はKOFの他にも、いい意味でピーキーな良ゲーである『MVCI』にハマり、さらにEvent Hubsさんが良質な記事をたくさん出しているため、翻訳が追いつかない状態が続いております。

今回は、そんなピーキーなゲームたちと付き合っていくための必須スキルである、感情コントロール、特に「怒り」のコントロールについて学ぶ記事となります。

 

 

元記事:How to handle losing in fighting games(October 11, by Henry ‘Choysauce’ Choi )

 

You Lose

この2単語が画面に出たのを見たとき、あなたの内側に湧き上がるものがあるはずだ。怒り、悲しみ、失望、様々なネガティブな感情が、身体の中にこみ上げてくるはずだ。そして、考え込み始めたり、「この下手くそ!」と毒づいたり、「いまのクソやんけ!くぁwせdrftgyふじこlp…」と叫んだり…。アケコンを台パンしたり、コントローラーが宙を飛んだりして、最終的に閉塞感や無力感で苛まれながら座り込んでしまう。

我々プレイヤーは、皆それを経験してきた。敗北による苦い一刺しは、しばしば過剰に感じられ、我々は感情のコントロールを失ってしまう。しかし、ゲームで負けることをこんなにも重く受け止めてしまうのはなぜだろう。端的にいうと、皆「勝ちたい」と思っているからだ。我々は「上達」するためにあまりにたくさんの時間や努力を格闘ゲームに費やし、その分、敗北によって努力や能力が不充分であると突きつけられたように感じてしまうのだ。

我々が身を削って練習につぎ込むほど、自尊心は結果とリンクするようになる。そして、敗北を「自己否定」だと受け取ってしまう。それは敗北による傷の深くに塩を塗り込み、我々の感情や自尊心を深く傷つける。

もちろん誰だって敗けたくはないだろうが、それはゲームを(そして人生を)学ぶ上で不可欠な側面でもある。そのため、我々は敗北のネガティブな面に対処し、そして前向きに歩めるようになる必要がある。では、イライラせずにやっていくにはどうすればいいのだろうか?

解決策

キツい敗北をうまく乗り切る解決策はシンプルで、ある一つの言葉に集約される。「個人的なことだと受け取らない*1」。あなたが覚えておくべきなのは、能力や功績は、自分のアイデンティティや存在価値と同一視されるべきではない、ということだ。客観的に敗北と向き合うことは、成長するためにも、イライラしないためにも必要である。とはいえ、言うは易いが実際に行うのはまた別の話だ。

*1:原文は”Don’t take it personally”。これは多様性にあふれる英語圏(アメリカ?)によく見られる考え方で、何かしら物事が起こった時にその原因が自分固有の問題だと考えないことで、不必要に軋轢を生じさせない考え方である。

 

人間の脳とは厄介なもので、自分の思うとおりに物事を受け取るとは限らない。なので、自分で前もって仕掛けを施し、いくらかの戦略を実行する必要がある。その各種戦略によって敗北によるネガティブな感情を和らげることができるし、さらにポジティブな経験に変えてしまうことさえできる。

 

焦点と感情はシンクロする

何に焦点を合わせるか、それによって人の感情の大部分は支配されてしまう。もし、敗北に拘泥し、それがどれだけ理不尽か、あるいはどれだけ自分が下手くそかに焦点を合わせているなら、そのようにネガティブな感情に囚われてしまう。敢えて何か別のこと、ポジティブなことに着目することでより早くネガティブな感情から抜け出すことができる。

 

ゲームと距離を置く

敗北から焦点を変えるために最も効果的かつ簡単な方法は、何か別のことにそらしてしまうことだ。ゲームから距離を置いて別のことをすることで、リフレッシュし、敗北のことを考えるのをやめさせることができる。そして気持ちが落ち着き、たくさんのネガティブなエネルギーを追い出してしまってからゲームに戻ることができる。

物理的に別のことをやるのが良く、筋トレしたり、片付けをしたりと、なにかしら身体を動かすものが良いだろう。身体を動かすことは直接的に焦点を変えさせ、体内にエンドルフィンが放出されるようになる。そして気分が高まり、用事も達成することで、気持ちよく過ごせるようになる。

また、より楽な活動を行うこともできる。テレビ番組を観ながらスナックをつまんだり、他の競技的でないゲームをプレイしたりといった具合だ。もし、競技的なプレイヤー(*ガチなプレイヤー)なら、試合動画を観ることにし、ゲームやキャラの組み合わせについて学ぶのも良いだろう。この行為は「ゲームから距離を置く」ということに直観的には反しているかもしれないが、実際のプレイから離れる、という点ではちゃんと意味がある。

 

敗北をリフレーミングする

そうはいっても、競技的なプレイヤーほど、ゲームと距離を置いているときでさえ敗北のことを忘れるのは難しいことだろう。他のことをやっているときでさえ、ネガティブな感情がついて回るはずだ。このケースの場合、自分の感情を理解し、どうコントロールするのか学ぶ必要がある。

感情というものは、生活の中で起きる出来事に対する解釈の結果である。ある出来事がどう自分に意味するのか、自身が作り上げたストーリーなのだ。しかし、感情が作られたストーリーであるならば、同時にそれを作り変えることもできる。そのストーリーを作り変える能力のことを「リフレーミング」と呼ぶ。

リフレーミングはあらゆるネガティブな感情について、受け取り方を変えてしまえる強力なツールだ。人間の心とは、情報の欠落によるスキマを埋める必要があるため、人は自分自身のことを謀り、ある特定の時点では意味が通っている情報を勝手に自分で作り上げてしまう。

例えば、ショッピングモールを歩いていて、友人があなたの目の前を通り過ぎようとしている場面を想像して欲しい。あなたは相手に手を振ったが、相手は手を振り返してこなかった。そのとき、最初に頭を駆け抜けるのはどんな考えだろうか?それは「なんで手を振り返してこなかったのだろう?私に会って動揺しているのだろうか」という考えだろうか。それとも、「ふーん、手を振り返してこないぞ。おそらくボーッとしてて目に入らなかったのだろう」というものだろうか。

最初に書いたストーリーはあなたを不安にさせ、どうしてこの人は動揺しているのか、と悩ませることだろう。実際には全くそういうことがなかったとしても、だ。しかし、2番目のストーリーなら、あなたは気分を害することなく買い物を続けることができる。この例はいかにリフレーミングがストーリーを変え、全く同じ出来事から異なる感情を受け取ることができるかを示している。

人には自身を謀るようなことをする一方で、ポジティブな文脈で物事を受け取る能力があるのだ。同様にすれば、敗北をさほど深刻ではないものや、むしろプレイヤーとして非常にポジティブなものとしてさえ受け取ることができる。

また、敗北はそのゲームの経験を積んだとも考えられる。ある特定のキャラとの組み合わせに関して、敗北はそのキャラを克服するまでの通過点として見なすこともできる。

加えて、敗北は一種の精神的な「トレーニング」として見なすこともできる。学ぶことで経験した痛みに感謝することもできる。その痛みが、あなたにとっての「実り」をもたらしてくれるのを知ることができるからだ。ネガティブな感情を成長、練習、そして強くなることへの燃料とすることさえできるのだ。

さらに、敗北を発奮材料とも認識することができる。あなたが敗けたキャラはレアキャラで、そのキャラでレベルの高い相手と戦ったことがないかもしれない。その敗北を、そのキャラを対策しようと思うだけの高いレベルの相手にめぐりあったとリフレームすることもできる。

このような経験を経ることで、トレーニングモードで練習して上達したくなるし、その新たなライバルを高みに上らせることにもつながる。

 

セルフコントロールを覚える

敗北とうまく向き合うやり方の肝は「セルフコントロール」だ。人が感情的に興奮しているとき、うまく決断できないものだということは理解できるだろう。しかし、自分がいつそうなっているのか、把握するのは難しい。そして、それに気づいているかどうかに関わらず、どのように反応するかは常に自分で選択しているのだ。これらを踏まえて、状況毎にしっかり対応することは、非常に学ぶのが難しいスキルだ。しかしながら、このスキルももちろん、他のスキルとも同様に、練習して習得可能である。

何がきっかけになり、いつ感情的に不安定になるのか気づくことがセルフコントロールの鍵である。あなたがいつ、敗北から感情のコントロールを失うのか、できるだけ意識して心に留めるのだ。もしそれがおこったら、一度インターバルを取り、自分がどう反応しようとしているのか考える必要がある。

そのときこそが「自己分析」をし、ネガティブな感情をあなたや、その周囲にとって利するようにリフレーミングする、完璧なタイミングだ。また、自分が冷静さをガッツリ失ったときのことを思い返し、どのような対応ができたのか反省することもできる。そして、それらを引き起こしがちな要素を見つけ出し、それに対する戦略を考えるのだ。

自身の感情をコントロールし、同時にそのきっかけをも回避するための戦略立ては事前にできるものだ。

怒りをよそにぶつける前に精神を鍛える訓練をする。イラッと来てすぐSNSに投稿したり、誰かに文句を言ったりするのをやめる。これはセルフコントロールの訓練であると同時に、自分の感情に対する反応を減らす訓練になる。

また、対戦相手がしっかりあなたを負かした場合、相手を賞賛する訓練もできる。これは自身の敗北から焦点をずらし、良いプレイをした相手を称えることにつながる。対戦相手が驚くべき連係や反撃であなたを負かした時、それをきちんと認めるのだ。

もし、勝ちを盗まれた*2と強く感じるのなら、その感情は一笑に付し「誰だって1回ぐらいはマグレで当たるわ」と考えればいい。また、スポーツマンでいたり、相手の勝ちを汚さないでいたりすることで、コミュニティから賞賛され、ボーナスポイントをもらうこともできる。

*2:「勝ちを盗まれた」とは、あらかた勝っていたはずの勝負に敗けてしまうことを指す。例えば格闘技なら、終始有利に試合を進めていたはずが判定では相手の勝ちになってしまった、そのようなケースを指す。格闘ゲームならほぼ勝ち確定の状況から偶然が重なって大逆転負けしたような場合などが考えられる。

そして、多くの場合、楽しくあろうとすることだ。敗北を馬鹿げたことだと認識し、笑い飛ばせるようにしよう。対戦相手に関わらず、敗北というシチュエーションを楽しめるようにできるだけ努力しよう。同じ相手に野試合で再び対戦したり、別のトーナメントで当たるのを楽しみにし、そして今度は倒せるように挑戦しよう。

そうやっていると、敗北を通して、あなたは新しいライバルや友人を手に入れることになるだろう。ガチになって、激しいトレーニングを積む選択肢ももちろんあるが、もし自分のやっていることが苦痛になってしまうようでは、始めた時の初心を失っているようなものだ。

がんばってコントロールしようとしたのに、最後は感情をうまく制御できなかったとしても、気を落ちしなくていい(これもセルフコントロールだ)。ミスはみんなするものだし、やろうとし続けてさえいれば、いずれできるようになるだろう。

 

結論

ともあれ、敗北と向き合うために何が自分のためになるのか探し、そしてコントロールする訓練をつづけること。自身をネガティブな考えや感情の中に置いておかないこと。自分自身のことを理解し、つまらないものを除外することで自分の状態を変える能力を訓練すること。

覚えておいてほしいのは、ミスや失敗は、勝利や成功への礎だということである。確かに敗北と向き合うためにはたくさんの時間と訓練が必要だ。しかし、それを続けることで、振り返って省みたときにより高みに*3上ってきたことを実感するだろう。

 

*3:原文では、「ナトリウム・フリーの生活」すなわち「減塩生活」という表現が使われている。FGC英語では、「ムカつくこと、イライラすること、憮然とすること」などを”Salty”と表現するため、直訳すれば「イライラなしの生活」という意味になる。しかし、「ストレスフリー」と表現すると非常に安直に思えたため、敢えて意訳することにした。